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TestFlightまで進んだ「そっと」を、公開せずに終えることにした。

審査に対応して直したら、シャッター音が鳴った。静かなカメラを目指した「そっと」を、TestFlightのビルド5まで進め、公開せずに終えるまで。

生成りの紙の上に置かれた、オリーブ色の紙製カメラと、ひとつの角がずれた撮影フレーム。
未完成のカメラをイメージしたAI生成イラスト。実際のアプリ画面ではありません。

「音なっちゃうよ?」

審査の指摘を受けて直したカメラアプリを試したとき、私が返した言葉です。静かに撮るためにつくっていた「そっと」で、シャッター音が鳴りました。

そこからもう一度撮影の仕組みを変え、TestFlightのビルド5まで進めました。それでも、今回は開発を終えることにしました。App Storeでの公開は見送ります。

せっかくなので、うまくいかなかった方の制作記録も残しておきます。AIと一緒にアプリをつくって、途中でやめた話です。

料理を、さっと静かに撮りたかった

「そっと」でやりたかったことは、わりと単純でした。

料理や日常のものを撮る。起動したらすぐ使える。撮影の途中で広告が出てこない。登録もいらない。毎回同じ設定をし直すのも面倒なので、好みの撮り方を保存できるようにする。

機能をたくさん並べるより、撮るまでの手間を減らしたい。そんな小さなカメラを考えていました。

AIと相談しながら、画面や撮影まわりの実装を進めました。試作では明るさや倍率、写真の比率、設定の保存も扱っています。ただ、画面やコードができても、本当に静かに撮れるか、写真の質は十分かという確認は残ります。最初の計画でも、そこを実機で確かめることを優先していました。

つくりたいものを言葉にして、形にしていくところまでは進められた。その先に、審査がありました。

最初はスクリーンショット。次は撮影の仕組み

9月30日の審査では、スクリーンショットに含まれる価格への言及を指摘されました。ガイドライン2.3.7です。「無料」のような表現も、価格の情報として扱われます。

該当する文言を画像から外し、再提出しました。アプリの中身だけでなく、ストアに置く画像や言葉にも確認が必要になる。まずは、紹介する側の情報を直す作業でした。

その後、10月2日付の審査では、別の指摘が来ました。ガイドライン2.5.14。撮影していることを知らせる表示や音についてです。

今回の通知では、写真を撮る際にシャッター音を自動で無効にしている点が挙げられ、撮影中であることを関係者に知らせる手段を求められました。その表示は無効にできず、撮影中に画面を空白にすることもできない、という内容です。

今度は、紹介文を整えるだけでは済みません。「静かに撮る」というアプリの中心にある体験と、撮影を周囲に知らせる仕組みを、どう両立させるか。撮影そのものの設計に戻る話になりました。

直したら、欲しかった体験から離れた

ビルド4では、映像のフレームから写真を取り出す方式をやめ、Appleの静止画撮影用APIを使う形に変えました。撮影前の明示的な同意、消せないカメラの動作表示、撮影・保存の表示も入れています。

この方式では、消音に対応していない環境では通常のシャッター音が鳴ります。そこで出たのが、冒頭の「音なっちゃうよ?」でした。

修正した版を触って、最初に欲しかった「静かに撮る」をもう一度考えることになりました。ここが、今回の開発でいちばん具体的なつまずきでした。

ビルド5では、同意や撮影中の表示を残しながら、映像のフレームを使う方式に戻しました。10月5日にはTestFlightで試せる状態になっています。

ただ、この版でApp Storeの審査を通したところまでは進んでいません。TestFlightは公開前にアプリを試すための場所で、そこに届くことと、ストアで配信できることの間には、まだ確認が残ります。

修正案が出て、コードが変わり、次のビルドができる。その一つひとつはちゃんと進捗です。でも、つくりたい体験を保ったまま、人に使ってもらえる形まで届くか。「そっと」は、その答えが出る前に止めました。

そっとの制作の流れ。9月30日に価格表現、10月2日に撮影表示の審査指摘。10月5日のビルド4でシャッター音を確認し、ビルド5は内部TestFlightへ。App Reviewには再提出せず、10月6日に作者の判断で開発を終了。
審査への対応と、その後の制作の流れ。

図の内容を文字で読む

  1. 9月30日紹介画像の言葉を直す

    価格への言及を指摘され、スクリーンショットを修正。

  2. 10月2日撮影をどう知らせるか

    撮影中であることを知らせる表示や音について指摘。

  3. 10月5日・ビルド4「音なっちゃうよ?」

    静止画撮影用APIへ変更。試すとシャッター音が鳴った。

  4. 10月5日・ビルド5内部TestFlightへ

    同意と表示を残して映像フレーム方式に戻す。App Reviewへは再提出していない。

  5. 10月6日公開せず、開発を終える

    承認結果が出る前に、作者自身の判断で区切りをつけた。

続けない、と決める

やめるときには、たぶんApp Storeの審査は通らないだろう、と考えていました。

もちろん、それは私の見立てです。届いていたのは具体的な修正要求で、Appleから今後の承認の可能性まで否定されたわけではありません。まだ結果が決まっていないところで、自分で区切りをつけました。

振り返って残るのは、アプリの中心になる機能について、実装と公開の条件を一緒に確かめる大切さでした。静かに撮れる方法を探すなら、画質だけでなく、撮影中の表示や同意の取り方も含めて考える。審査に合わせて変えたとき、それでも自分がつくりたかったものと言えるかも見る。

AIに実装を手伝ってもらえても、続きをつくるかどうかは自分で決めることでした。

「そっと」は、公開するアプリの一覧には残りません。制作ノートには、ここまでの経緯を残しておきます。

Takuto / Slothful Studio

参考:Apple App Reviewガイドライン 2.3.7、同 2.5.14